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【傷害事件における示談】
示談の流れや示談金について弁護士が解説

こちらでは,傷害事件における示談交渉の流れや示談金などについて解説しております。

示談とは

 何かトラブルがあった際に,「示談」という言葉を聞くことがあると思います。この示談とは,当事者間で紛争がある場合に,その紛争を話し合いで解決することをいいます。刑事事件でも民事事件でも,当事者間で示談を行なうことがありますが,刑事事件においては,犯罪を犯した加害者と被害者が話し合い,紛争を解決するもので,被害者との間で示談が成立することによって,被疑者・被告人の刑事処分に影響を与えることになります。
 一般的に,傷害事件における示談では,加害者が罪を認めた上で被害者に謝罪し,被害者の受けた精神的苦痛,治療費などの損害に対し一定の金銭(示談金)を支払います。

傷害事件における示談のメリット

 傷害事件で示談することによる,被疑者・被告人側のメリットについて説明していきます。

不起訴処分になるなど刑事処分が軽くなる傾向にある

 傷害事件では,加害者が被害者に対して謝罪し,被害弁償金を支払って示談することがあります。警察に被害届が提出されるまでに,被害者との間で示談が成立していれば,捜査機関による刑事事件化を防ぐことが可能です。
また,刑事事件化された後であっても,被害者との間で示談が成立していれば,検察官から被疑者が事件について反省していると評価されることが多くなります。そして,被害者の被疑者に対する処罰感情も低くなります。どのような刑事処分になるかは,行為態様,傷害の程度,同種犯罪の前科前歴の有無などによって異なりますが,被害者と示談をしていることで,前科の付かない不起訴処分になる可能性が高くなります。
 また
,傷害事件で起訴されたとしても,被害者と示談が成立していることは,裁判官の量刑判断にも大きな影響を与えます。傷害罪の刑事罰は,15年以下の懲役又は50万円以下の罰金と刑の幅が広く,傷害の程度によっては初犯でも実刑が科される可能性があります。そのため,本来なら実刑判決がなされる場合であっても,示談が成立していることで,執行猶予付きの判決や罰金判決にとどまるなど,裁判で言い渡される刑罰が軽くなる可能性があります。
さらに,被害者に示談金を支払うことで,被害者に対する損害賠償義務を免れることもできるため,被害者から後日,損害賠償請求をされないといったメリットもあります。

社会的な影響を抑えることができる

 警察の捜査段階において,被疑者が逮捕される前であれば,被害者と示談をすることによって,刑事事件化を防ぐことができる場合もあります。刑事事件化を防ぐことができれば,事件が報道されたり,警察から職場等に連絡されたりする可能性が大きく減少するため,社会的な影響を抑えることができます。
 また,刑事事件化を防ぐことができなかったとしても,示談をすることで刑事処分が軽くなる関係で,その事件が報道されるリスクや職場等に知られるリスクが減少します。仮に,事件のことが職場等に知られてしまった場合であっても,被疑者が示談して不起訴処分になることで,勤務先からの懲戒解雇を免れたり,退学を免れたりする可能性が増えます。

傷害事件の示談交渉の流れ

弁護士が傷害事件の被害者に連絡

 傷害事件として刑事事件化された場合,被疑者・被告人と被害者が直接示談交渉するということは基本的にありません。早く示談したいと思って,被疑者が直接被害者に連絡を取ると,却って被疑者が逮捕される可能性が上がってしまいます。そのため,傷害事件で,被害者と示談したい場合には,弁護士を弁護人として選任して,弁護士に被害者との示談交渉をしてもらう必要があります。
 弁護士は,弁護人に選任された後,まず警察や検察に連絡して,被害者の連絡先を弁護士に教示してほしい旨を打診します。警察や検察は,弁護士から上記のような要請があったことを被害者に伝え,被害者が承諾すれば,警察や検察から被害者の連絡先が弁護士に伝えられます。その後,弁護士が被害者と連絡を取り,示談交渉をスタートさせていきます。

弁護士と被害者との示談交渉,示談書の作成

 弁護士が被害者と電話等で連絡を取り,被害者が弁護士との示談交渉に応じてくれた場合,被害者との示談交渉を行っていくことになります。示談交渉は,直接被害者と会うこともあれば,電話で行うこともあります。
 示談交渉の結果,被害者との間で示談がまとまれば,弁護士が作成した示談書(合意した示談内容を書面にしたもの)を取り交わすことになります。一般的には,示談書は2通作成し,1通を被害者に渡す形になります。このように示談書を作成することによって,後々のトラブルを防ぐことができます。示談書の内容は,事件の内容によって変わりますが,傷害事件の場合には,被害弁償や処罰感情の記載の他に,被疑者・被告人が守るべき誓約事項や守秘義務等が定められることがあります。また,示談書は刑事事件の処分の関係で出てくることが多いですが,多くの示談書では民事的な問題に関しても示談書に記載され,刑事・民事両方の紛争を解決する内容になっています。
 示談交渉においては,被疑者・被告人,被害者共に示談金に強い関心があることが多いです。しかし,
示談金に関してはどの事案でいくらと決まっているわけではありません。そのため,事案に応じて,弁護士が被害者に対して示談金を提示することになります。弁護士によって,提示する示談金の根拠は異なると思いますが,基本的には被疑者・被告人の経済力や民事訴訟における損害賠償額などを考慮することになります。

示談金の支払いとその後の手続

 示談書を取り交わしたら,支払期限までに示談金を被害者に支払います。示談金が被害者に支払われた段階で,正式に示談が成立したことになります。弁護士が示談書を取り交わしたことと示談金を支払ったことを警察や検察に伝えると,その後に示談が成立したことを踏まえて,刑事処分が下されます。
 傷害事件では,被害者に身体的損害が発生していることから,軽微な事案であっても,被害者との示談が成立しなければ,ほとんどが起訴(公判請求及び略式起訴)されることになります。しかし,被害者との示談が成立すれば,不起訴処分で終了する可能性が高くなります。また,被害の程度が大きい傷害事件の場合には,重大な犯罪であるため,被疑者が逮捕・勾留されることも多いですが,捜査段階であれば,示談の成立により,すぐに被疑者が釈放されることも多くあります。

傷害事件における示談金の金額

<傷害事件における示談金の金額>

傷害事件と一口に言っても,被害者の被害の程度が様々であるため,示談金には大きな幅があり,示談金が数万円で収まる事件から数百万円になる事件まであります。傷害事件においては,被疑者が行った傷害行為の態様や凶器の有無,傷害行為による被害者の怪我の程度,加害者と被害者との関係性,事件の経緯や事件後の対応などによって,被害弁償を行う金額も変わってきます。傷害事件の場合には,慰謝料,治療費,被害者が治療のために休業した場合の休業損害,逸失利益などが示談金の金額の算定要素になってきます。そのため,被害者が怪我を負い,病院に入院して,仕事がなかなかできなくなってしまったなどの事情があると,示談金の金額が大きくなる傾向にあります。

<傷害事件で示談金が高額になるケース>

 傷害事件においては,上で述べたように,被害者の怪我の程度が大きかったり,後遺症が残ったりする場合には示談金が高額になる傾向にあります。また,怪我が大きいことに比例して,治療費や休業損害等も大きくなる傾向にあるので,怪我が軽い場合と重い場合とでは,示談金に大きな差が出てきます。
 以下のようなケースでは,示談金が高額になることが予想されます。

・被害者の顔を殴ったことにより,被害者の歯が折れ,鼻が骨折した場合

・共犯者と共に被害者をバットで殴るなどしたことにより,被害者に全治三カ月の怪我を負わせた場合

・被害者の頭部を執拗に蹴ったことにより,脳に障害を与え,被害者に後遺症が残った場合

・被害者に対して日常的に傷害行為を行い,身体的にも精神的にも大きな損害を与えた場合

・被害者に大怪我を負わせたことで,被害者が長期入院することになり,それに伴って,休業損害等も大きくなった場合 

傷害事件の示談交渉における注意点

当事者同士での示談交渉は避ける

 被疑者と被害者が元々知り合いの傷害事件では,被疑者が刑事事件になる前に,被害者と直接交渉して示談をしようとするケースがあります。まだ全く刑事事件になる様子がない状況であれば,当事者同士で示談交渉することも否定はしませんが,被害者が警察に相談しているような場合には,当事者同士での示談交渉は非常に危険です。被害者との示談交渉がうまくいけばいいですが,うまくいかなかった場合に逮捕の可能性を上げてしまいます。
 傷害事件として刑事事件になりそうな場合には,被害者と直接示談交渉を行うのは避け,弁護士を代理人,弁護人として選任し,弁護士と被害者が示談交渉する形にした方がいいでしょう。この方法であれば,逮捕の可能性を上げることはありませんし,後々無用なトラブルを生むこともなくなります。  

弁護士を付けて,示談金が法外な金額にならないようにする

 傷害事件においては,加害者が被害者に怪我を負わせているため,当事者間で示談交渉をすることになると,お互いに感情的になりやすくなります。その結果,被害者から法外な金額の示談金を求められ,全く示談できない状況になってしまうこともあります。そのため,冷静に被害者と示談交渉を行いたいと思うのであれば,弁護士を付けて対応すべきです。
 弁護士が間に入ることになれば,弁護士が有する法律の知識や経験に基づき,冷静に示談交渉できるので,示談が成立する可能性が上がります。また,示談金についても,弁護士が法律の専門家として事案に即した金額を提示して交渉することになるので,被害者から法外な金額の示談金を求められにくくなります。

刑事処分との関係で,示談の期限を意識する

 被疑者・被告人の立場で考えると,被害者との示談が成立することで,不起訴処分になったり,執行猶予判決になったりすることを期待するものです。そのため,いつまでに被害者との示談を成立させるかは非常に重要になります。
 例えば,被疑者が逮捕・勾留されている傷害事件で,勾留満期に被害者と示談が成立したとしても,既に検察官が起訴してしまっていれば,不起訴処分になることはありません。不起訴処分を目指して,示談交渉を行うのであれば,示談のタイムリミットを意識して交渉する必要があります。

示談交渉が得意な弁護士を選ぶ

 犯罪事実を認めている傷害事件においては,被害者との示談の成否が処分の結果を左右するため,このような傷害事件で弁護士を選ぶ際には,被害者との示談交渉が得意な弁護士を選ぶ必要があります。
 被害者との示談交渉においては,①暴行・傷害事件の示談交渉経験,②他人とのコミュニケーション能力,③警察や検察との適切な情報共有等のスキルがどれだけあるかが重要になってきます。被害者との示談を100%成功させる弁護士はいませんが,示談の可能性を高めてくれる弁護士は存在していますので,上記のような基準を参考に,弁護士を選ぶといいでしょう。

傷害事件における示談の解決実績

傷害事件における示談の解決実績

 被疑者が泥酔して被害者に暴行を加えたことにより,首などに怪我を負わせてしまい,警察に検挙された傷害被疑事件。
 被疑者は,弁護士を付ける前に,直接被害者に謝罪をして被害弁償をしたいと申し出ていましたが,被害者からは断られていました。当事務所の弁護士が弁護人に付いてから,弁護士は改めて,弁護人を通じて謝罪と弁償をしたいと被害者に申し出ました。そうしたところ,被害者は弁護人と話をすることに了承してくれました。被害者には首に痛みが残るなど怪我の程度が重く,被害感情も厳しかったため,当初は示談交渉が難航しました。しかし,弁護士は,被害者と何度も交渉を重ね,被疑者の経済状況等を具体的に話し,提示額に納得をしていただけるよう説得を続けました。その結果,最終的には被害者との間で示談することができました。
示談が成立し,被害者に許していただいたことにより,被疑者は最終的に不起訴処分(起訴猶予)になりました。

傷害事件における示談の解決実績

 被疑者が泥酔して被害者に暴行を加えたことにより,警察の捜査を受けた暴行(傷害)事件。
 事件から数日後,当事務所の弁護士が弁護人として付きました。本件は,被疑者が泥酔していたこともあり,警察が被疑者の勤務先に連絡を取っていたため,事件については勤務先も把握している状況でした。このような状況であったため,弁護士には被害者との早期の示談が求められました。
 弁護士は,警察に確認した上で,すぐに被害者と連絡を取り,示談交渉をスタートさせていきました。被害者からは,被疑者の暴行で傷害を負った旨の申告があり,被害届が警察に提出されれば,傷害事件として刑事事件化される可能性が高い状況でしたが,弁護士が被害者を説得して,最終的に警察に被害届を提出しない形で示談を成立させることに成功しました。
 これにより,本件については刑事事件化を免れ,被疑者に前科が付くことはありませんでした。また,その結果,被疑者は職場を辞めずにすみました。

傷害事件における示談の解決実績

 被疑者が電車内において被害者を殴打し全治6ヶ月の傷害を負わせたことにより,警察(警視庁)に逮捕された傷害事件で,逮捕直後に当事務所の弁護士が弁護人として付きました。
 被害者の怪我の程度が大きかったため,被疑者が勾留される可能性も高い事案でしたが,弁護士が検察官に対して勾留請求を回避するように求めた結果,検察官は弁護士の主張を聞き入れて,被疑者を釈放しました。
 被疑者の釈放後,弁護士は被害者と示談交渉を行い,被害者との間で示談が成立しました。その後,検察官(東京地方検察庁)に対して,不起訴処分を求める意見書を提出し,被疑者を不起訴処分にするよう求めたところ,検察官は被疑者を不起訴処分(起訴猶予)としました。

刑事事件の弁護を依頼するなら,刑事事件に強い弁護士に相談を!

 自分や家族が刑事事件に巻き込まれた際に,「どんな弁護士に相談・依頼するか」ということは,非常に頭を悩ませる問題だと思います。
 刑事事件は,民事事件と異なる部分が多く,手続も異なるため,普段から刑事事件を取り扱っていない弁護士に相談・依頼するのはリスクがあるでしょう。そのため,刑事事件に関して相談・依頼する際には,刑事弁護の経験が豊富な弁護士,刑事事件に強い弁護士を弁護人に付けることをお勧めします。
 刑事弁護の経験が豊富にある刑事事件に強い弁護士に相談すれば,早い段階で弁護方針が固まり,その先のやるべきことが見えてきます。そうすることによって,安心感が得られ,適切な行動が取れるようになります。そして,警察・検察の処分や裁判所の判決などを有利な方向に導く可能性が上がることになります(逮捕の回避,勾留の阻止,保釈許可,不起訴処分,執行猶予判決など)。
 渋谷青山刑事法律事務所は,刑事事件の弁護に特化した弁護士事務所であり,刑事事件の相談実績,解決実績が豊富にあります。刑事事件に巻き込まれた場合には,ぜひ渋谷青山刑事法律事務所に御相談ください。

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メディア掲載実績・
講演実績

2024年6月24日

二宮英人弁護士が漫画「ハジメテノサツジン」で,法律監修を行ないました。

2024年5月29日

有原大介弁護士が「日刊SPA!」で,不同意性交等罪についてコメント・解説をしました。

2023年10月26日

二宮英人弁護士がABEMATVの番組で,未成年の性犯罪についてコメント・解説をしました。