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このページでは,執行猶予制度について御説明いたします。
執行猶予は刑法第25条以下に規定があります。執行猶予は,有罪判決に基づく刑の執行を一定期間猶予し,その間に罪を犯さないことを条件として刑罰権を消滅させる制度です。
刑罰の目的には犯人に制裁を与えるだけでなく,犯人にその過ちを自覚反省させ,社会の役に立つ人間として立ち直らせることも含まれます。軽微な罪を犯した場合で,犯人が十分に反省し,今後はまじめな生き方をしていきたいと心に誓っているような場合は,もはや刑の執行をする必要はないともいえますし,このような人を刑務所に入れると,せっかく立ち直ろうとした決意が崩れて,かえって以前よりも悪くなるといった事態も考えられます。執行猶予制度は,このような事態を回避する制度といえます。
執行猶予については,期間が1年から5年の間で定めることができ,裁判所の判断で執行猶予期間が決まります。
実刑判決と執行猶予判決は,どちらも犯罪事実が認められる有罪判決ですが,被告人が刑務所に収容されるかどうかという点で大きな違いがあります。被告人が,「懲役1年6月」という有罪判決が言い渡されれば,被告人には刑務所に1年6ヶ月入らなければならないという効力が発生します。しかし,この判決が,「懲役1年6月,執行猶予3年」となれば,いきなり刑務所に入る必要はなくなります。
判決で執行猶予が付くかどうかは様々な事情が影響しますが,犯罪事実の重さや前科の有無,被害者との示談の有無などは大きな考慮要素となります。
初度(初めて)の執行猶予と再度(2回目以降)の執行猶予とで条件は異なります。
初度の場合とは,「前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」又は「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者」になります(刑法第25条第1項第1号,第2号)。裁判所は,これらの者に,3年以下の懲役若しくは禁錮又は50万円以下の罰金の言い渡すときは,情状により,裁判が確定した日から1年以上5年以下の期間で,刑の執行を猶予することできます(第25条第1項)。
初度の場合であっても必ず執行猶予が付されるとは限らず,執行猶予が認められるか否かについては,裁判所の裁量に委ねられています。なお,初度の場合には,裁判所は裁量により保護観察に付することができます(第25条の2第1項前段)。
再度の場合とは,「前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその執行を猶予された者が1年以下の懲役または禁錮の言い渡しを受け,情状に特に酌量すべきものがあるとき」です。もっとも,この場合であっても,初度の執行猶予の際,保護観察に付されており,その猶予期間に更に罪を犯した者は再度の執行猶予が認められません(第25条第2項)。
再度の場合には,初度の場合と異なって,言い渡される刑の範囲が,1年以下の懲役または禁錮と狭められ,かつ,情状に特に酌量すべきものがあるときのみ執行猶予が付きます。そして,再度の場合には,初度の場合と異なり,必ず保護観察が付されることになります(第25条の2第1項後段)。
第25条 次に掲げる者が三年以下の懲役若しくは禁錮又は五十万円以下の罰金の言渡しを受けたときは、情状により、裁判が確定した日から一年以上五年以下の期間、その刑の全部の執行を猶予することができる。
一前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
二前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から五年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
2前に禁錮以上の刑に処せられたことがあってもその刑の全部の執行を猶予された者が一年以下の懲役又は禁錮の言渡しを受け、情状に特に酌量すべきものがあるときも、前項と同様とする。ただし、次条第一項の規定により保護観察に付せられ、その期間内に更に罪を犯した者については、この限りでない。
第25条の2 前条第一項の場合においては猶予の期間中保護観察に付することができ、同条第二項の場合においては猶予の期間中保護観察に付する。
2前項の規定により付せられた保護観察は、行政官庁の処分によって仮に解除することができる。
3前項の規定により保護観察を仮に解除されたときは、前条第二項ただし書及び第二十六条の二第二号の規定の適用については、その処分を取り消されるまでの間は、保護観察に付せられなかったものとみなす。
これについては,実務上,犯罪の軽重及び情状が基本に捉えられています。つまり,犯行態様の悪質性や結果の重大性を評価しつつ,犯罪後の事情や,犯人の個々の環境,再犯のおそれなどを考慮して総合的に決められることになります。
より具体的に言いますと,犯行動機に酌むべき事情があるか,犯罪により生じた実害が軽微であるか,示談が成立しているか,被害が弁償されているか,被害者にも落ち度があるか,などが考慮されます。
被告人が保釈されずに勾留が続いていた場合,裁判所で被告人が執行猶予判決を受けると,その場で釈放されることになります。そのため,被告人は執行猶予判決が出たその日に自宅に戻ることができます(被告人の所持品が留置施設に置いてある場合については,留置施設の職員と一緒に取りに戻ることはあります)。
また,被告人に執行猶予判決が言い渡された場合,被告人は刑務所に入る必要はなくなります。例えば,被告人が懲役1年6月,執行猶予3年という有罪判決を受けた場合,被告人には刑務所に1年6ヶ月入らなければならないという効力が発生しますが,執行猶予が付いているため,刑の執行が猶予され,いきなり刑務所に入る必要がなくなります。そして,被告人が執行猶予期間である3年間を何の罪も犯すことなく過ごすことになれば,懲役1年6月という刑が消滅し,被告人は一切刑務所に行く必要がなくなるのです。
さらに,被告人が執行猶予判決を受けることによって,資格制限を受けなくてすむ場合が出てきます。例えば,会社の取締役は執行猶予付きの判決を受けた者は除外していませんので,実刑判決ではなく執行猶予判決であれば,取締役の地位を失わなくてすむことになります。ただ,執行猶予判決も有罪判決であることには変わりありませんので,前科にはなってしまいます。
裁判所で被告人に対して執行猶予判決が下されると,被告人の身体を拘束する理由がなくなるため,被告人は社会で自由に生活することができるようになります。しかし,一定の条件に触れてしまった場合,執行猶予が取り消されることがあります。
まず,執行猶予期間中に,犯罪を犯して禁錮以上の刑になり,その刑の全部に執行猶予の言渡しがない時は前の判決の執行猶予は必ず取り消されます。また,執行猶予判決が言い渡される前に,他の罪を犯していて,その件で禁錮以上の実刑判決になったり,実は執行猶予判決前に禁錮以上の刑を受けていたことが新たに発覚したりした時も前の判決の執行猶予は必ず取り消されます(刑法第26条)。
次に,①執行猶予期間中に,さらに罪を犯して,その件が罰金刑になった場合,②保護観察付きの執行猶予判決となった者が保護観察の遵守事項を守らず,その上,その情状が重い場合,③執行猶予判決が言い渡される前に,他の罪を犯していて,その件で禁錮以上の刑となり,執行猶予判決を受けていたことが新たに発覚した場合については,裁判所の裁量で執行猶予が取り消される可能性があります(刑法第26条の2)。
また,執行猶予判決も有罪判決であり,前科にはなるので,その点から来る影響はあります。まず,執行猶予判決でも資格制限がある資格については制限がかかったままになります。そして,薬物犯罪などで執行猶予判決になった場合には海外渡航に大きな制限がかかることになります。
これまで刑の執行猶予制度は,「刑の全体について猶予するか否か」という選択肢しかありませんでしたが、平成25年6月13日に,「刑法等の一部を改正する法律」(平成25年法律第49号)が成立したことにより,「一部は実刑,一部は刑を猶予する」という判決が出せるようになりました(平成28年6月1日より施行)。
例えば,「懲役3年,うち1年は刑の執行を5年間猶予する」という判決を受けた場合,受刑者は2年間刑務所で服役し,最後の1年間は刑の執行を猶予されて,釈放されることになります。この法改正の目的は,主に薬物事件を対象とした保護観察の充実と再犯率の減少を目指すことにあります。
一部執行猶予判決を受けることができるのは,以下の者になります。
・前に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
・前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても,
その刑の全部の執行を猶予された者
・前に禁錮以上の刑に処せられたことがあっても、
その執行を終わった日又はその執行の免除を得た日から,
5年以内に禁錮以上の刑に処せられたことがない者
このように,対象犯罪による限定はありませんが,一部執行猶予の目的が被告人の再犯防止と改善更生を図る点にあるので,その目的に合った犯罪,具体的には依存性のある薬物犯罪やクレプトマニアによる窃盗罪のような犯罪類型で一部執行猶予が検討されることになります。
この一部執行猶予ですが,完全な実刑判決より刑務所に服役する期間が短くなるという点ではメリットがあります。しかし,一執行猶予の場合,刑務所を出所してからも執行猶予期間中は一定の制限を受けることになるので,その点はデメリットともいえます。そのため,一部執行猶予判決を狙いに行くかどうかは裁判前にしっかりと検討する必要があります。
被告人が大麻を相当量所持していたとして大麻取締法違反(所持)で検察官に起訴された事案で,当事務所の弁護士が被告人の起訴後に弁護人として付きました。
被告人には,これまでに薬物前科だけでも6件あり,刑務所にも何度も服役していました。ただ,ここ数年は真面目に生活していたため,弁護士は被告人を薬物依存症の更生施設に通所させることを検討していきました。被告人も二度と薬物に手を出さないようにしたいとの思いを強く持っていたことから,弁護士は被告人を薬物依存症の更生施設に通所させるため,保釈請求を行いました。被告人には,薬物事件で刑務所に服役した過去があったものの,裁判所は,弁護士の主張を認め,被告人の保釈を認めました。
裁判においては,被告人が保釈後更生施設に通所していることや内縁の妻が被告人を監督していること,逮捕前の生活が安定していたことなどを弁護士が主張していきました。検察官は,被告人に対して,懲役2年の実刑を求刑してきましたが,裁判所は,被告人に対して懲役1年10月の判決を下したものの,その刑の一部について執行を猶予する判決としました。
年 次 | 全部執 行 猶 予 の 言 渡 人 員 | 全部執 行 猶 予 の 取 消 人 員 | |||||||
総 数 |
単 純 |
保 護 観察付 |
総 数
| 取 消 事 由 | |||||
再 犯 | 余
罪 | 遵 守 事 項 違 反
| そ の 他 | ||||||
その他 | 保 護 観察中 | ||||||||
24 25 26 27 28 29 30 元 2 3 | 35,981 32,527 33,208 34,692 33,975 32,266 31,937 31,068 29,858 29,531 | 32,608 29,268 29,871 31,230 30,952 29,675 29,453 28,824 27,772 27,564 | 3,373 3,259 3,337 3,462 3,023 2,591 2,484 2,244 2,086 1,967 | 5,176 4,580 4,559 4,478 4,346 4,135 3,957 3,695 3,457 3,357 | 4,006 3,634 3,600 3,490 3,399 3,222 3,160 2,950 2,768 2,731 | 869 706 713 763 695 689 600 541 493 450 | 190 154 158 163 161 155 127 117 121 118 | 101 82 82 52 73 59 63 73 68 49 | 10 4 6 10 18 10 7 14 7 9 |
注 1 検察統計年報による。
2 懲役,禁錮及び罰金の全部執行猶予に関するものである。
3 「全部執行猶予の言渡人員」は,裁判が確定した時の人員であり,控訴審又は上告審におけるものを含む。
4 「単純執行猶予」は,全部執行猶予のうち保護観察の付かないものをいう。
5 「保護観察」は,売春防止法17条1項の規定による補導処分を含む。
6 「取消事由」の「再犯」は刑法26条1号に,「余罪」は同条2号に,「遵守事項違反」は同法26条の2第2号に, 「その他」は同法26条3号,26条の2第1号若しくは第3号又は26条の3のいずれかにそれぞれ該当する事由である。
7 「全部執行猶予の取消人員」は,同一人について一つの裁判で2個以上の刑の執行猶予の言渡しが同時に取り消され た場合も1人として計上している。
8 「取消事由」の「再犯」の「その他」は,単純執行猶予中の者のほか,仮解除中の者等を含む。
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